
大学卒業後は昼間の動物病院で7〜8年働いていましたが、診療時間が終了した後の夜間に患者様から入電があった時に十分な対応ができなかったり、夜間に入院患者さんを1人で見守ることしかできなかったりなど、夜間の診療体制の脆弱さを実感することが多く、業界の問題点として認識していました。ちょうどその頃、業界内でTRVAの中村先生や札幌夜間の川瀬先生をはじめとした夜間病院の先生方が救急に関するセミナーを開催することが増え、そのセミナーに参加したことが大きなきっかけとなりました。
私の最終的な目標は、地元(茨城県)に夜間動物病院を作ることでした。日本の夜間動物病院の多くは獣医師会が運営していたり、複数の組織が共同出資して運営している形態が多い中、個人経営している夜間動物病院として熊谷夜間救急動物病院の落合先生を知り、夜間動物病院の経営の勉強も含め、開業を念頭に入社を決意しました。
当時は熊谷夜間救急動物病院も開業してまだ9ヶ月くらいの時期で、開業メンバーである落合先生、小吹先生、動物看護師の大木さん、金澤さんが色々と試行錯誤していたのを覚えています。病院運営に関する細かいことや、私生活の過ごし方などを全員が自主的に考えていたのが印象的でした。当初から約1年で退職し、開業する予定で入社したのですが、みんな非常にオープンで、その輪に加えてもらえたのがとても嬉しかったです。当時は夜間病院を開業しようなんて人は他におらず、ちょっとした不安と孤独感を感じていたので、熊谷夜間救急動物病院のメンバーの姿勢がとても心強く、その後の開業準備も自信を持って進めることができました。

個人経営の夜間動物病院では、経営陣も現場の第一線で活躍していることから、現場の意見を経営に反映しやすいです。スタッフとの一体感を持った、スピード感のある経営ができる環境だと感じています。
私自身が多拠点展開を目指しているわけではありませんが、夜間診療の需要は確実にあると感じています。特に地方ではその需要に応えるに十分な人材確保が課題であり、夜間動物病院の継続には単純な人材確保だけでなく、夜間動物病院どうしの協力が必要だと感じています。何年にも渡り「確実にそこに行けば見てもらえる」というインフラのような形の夜間動物病院が増えることを望んでおり、そのために必要であれば自身の持つノウハウや資料を提供していきたいと考えています。
夜間動物病院に来る患者さんはほとんど全員が初診の患者さんです。多数の経験を積むことで、初診の患者さんの背景や状況を迅速に把握するスキルを磨くことができます。これは日中の病院の診察にも必要な能力だと思います。また、夜間診療では治療の結果がすぐに出ることが多いため、患者さんから感謝されやすく、獣医師としての自信がついていくのが手に取るように分かります。夜間に働くのは時間的には大変かもしれませんが、意外と楽しく、レベルアップを実感しやすい環境だと思います。アルバイトでも経験してみることで、新しい可能性が開けると思うので、まずは見学などから気軽に現場を覗いてみることをお勧めします。